【主な研究テーマ】


1.3次元計測と大規模環境のモデリング



(1) 形状処理とは?

3次元の「形」をコンピュータで扱うための技術で,機械設計や映像・ゲーム制作などの CADや CG で活用されています. 「形」の表現には,立体を表現するためのソリッドモデル, 滑らかな曲面を表現する自由曲面モデル, 小さな三角形や四角形で近似的に表現するメッシュモデル, 離散的な点の集合で表現する点群 (Point Cloud) などがあります. この研究では,点群モデルを扱います.

(2) 3次元計測と点群処理

レーザスキャナは,レーザを照射して物体の3次元座標を計測する装置です. レーザスキャナには,数十cm の近距離を計測する装置と, 数十m から数km の中・長距離の装置があります. 私たちは,主に,中・長距離のレーザスキャナを利用しています. レーザスキャナで得られた座標の集合を「点群(Point Cloud)」といいます. 高性能の計測装置を使うと,数千万から数億点を短時間で取得することができます. 私たちは,こうした大規模点群を効率的に処理する手法を研究しています.

(3) 大規模環境の3次元計測と点群処理

3次元計測と形状モデリングの技術を用いて, 人々が生活や業務を行うフィールドの3次元仮想環境の構築とその利活用に関する研究を行っています. 応用分野は,工場,プラント,社会インフラ,道路や鉄道などの交通網,通信,林業など多岐に渡っています.

ここでは,いくつかの研究を紹介します.

生産設備の 3D形状モデリング

工場などの生産設備の保守や改修のシミュレーションには 3D モデルが便利ですが, 現物通りのモデルを作成するには時間がかかります. そこで,レーザ計測された工業設備の点群から, 3Dモデルを生成する手法を研究をしています. 点群ベースの工場改修検討,レイアウト検討,生産ライン検討, 組立作業検討などへの応用についても研究しています.

【対話的な点群ベースの3Dモデリングシステム】


【3Dモデルの自動生成システム】

大規模点群のための干渉判定システム

大規模点群と3Dモデルとの干渉をリアルタイムに判定する手法を研究しています. スキャナからの可視性を考慮することにより, オクルージョン領域で誤判定をしない手法を開発しています.

【大規模点群のリアルタイム干渉判定システム】

移動計測データからの物体認識と3D形状生成

レーザスキャナを車両に搭載し,走行しながら点群を計測する装置を MMS (Mobile Mapping System) と呼びます. MMS で取得した大規模な点群データから,物体認識と3D形状生成を行い, インフラ設備(電力,通信,交通網,橋梁など)の保守を支援するための 研究を行っています.

【移動計測データからの対象物の認識と3Dモデリング】

研究室紹介の PDF

  • 研究室の最近の活動については,以下を参照してください.


    2.3次元形状モデリング



    製品設計や意匠デザイン,デジタルコンテンツ制作などにおいては, 3次元モデルの作成が重要となりますが,その作成には大変手間がかかります. 本研究室では,3D モデルを容易に作成・編集するための技術や, 高品質化するための技術について研究を行っています. これまで以下のような研究を行ってきました.
    • インタラクティブな3Dモデル編集   
      3D コンテンツの作成では,かなりの割合が既存モデルを改変して行われ, 完全な新規作成の比率はそれほど多くありません. そのため,実用的には,既存モデルを簡単かつ直感的に改変できる技術が重要です. 本研究では,デザイナの意図を簡単に満たせるように,制約指向の インタラクティブな形状変形手法の提案を行っています.
    •   3D形状データ圧縮
      3Dデータの圧縮技術に関する研究を行いました. 任意の位相を持つCADモデルや曲面モデル, またメッシュモデルに関して,複数の形状圧縮法を開発しました.
    •   3Dコンテンツのための電子透かし
      電子透かしは,コンテンツの質を損なわないように,見えない 情報を付加する技術です. 本研究は、3D形状データに対する電子透かしに関する世界で初 めての研究で, アフィン変換などの変換後も保持する特徴量に透かしを埋め込 む手法を開発しました. また,ベクトル型地図データの電子透かしにも応用しました.
    •   幾何推論を用いた三面図からの立体生成
      非多様体を用いた形状処理とATMS を用いた幾何推論を融合した 制約指向モデリングのフレームワークを用いて, 三面図からソリッドモデルを高速に算出するための方法を開発しました. 本手法は、商用のCADシステムに組み込まれています.
    •   非多様体位相のためのオイラー操作
      ワイヤフレーム、サーフェス、ソリッドモデルを統一的に扱うオイラー操作の導出に世界で初めて成功しました. また,集合演算手法の開発など,世界に先駆けて新世代の形状処理理論とアルゴリズムを構築しました. 本研究は,今日用いられているソリッドモデリングシステムの基礎理論の一つになっています.